リスクマネジメントと事業継続マネジメントについて

リスクマネジメントと事業継続マネジメント(Business Continuity Management, BCM)は、組織がリスクや災害に対処するためのアプローチですが、それぞれ異なる焦点と目的を持っています。

リスクマネジメントは、組織が直面する様々なリスクを特定し、評価し、管理するためのプロセスです。リスクマネジメントは予防的なアプローチであり、組織の目標や戦略の達成をサポートすることを重視しています。リスクマネジメントは、潜在的なリスクの特定だけでなく、リスクがもたらす機会も考慮に入れます。つまり、リスクマネジメントはリスクと機会の両面を総合的に評価し、適切な対策を講じることで、組織の成果や競争力を向上させることを目指します。

一方、事業継続マネジメント(BCM)は、事業の継続性を確保するための戦略と手法を策定・実行するプロセスです。BCMは主に災害や混乱、異常事態などの予期しない出来事による影響から事業を継続することを目的としています。BCMは、組織が事業を遂行し、サービスや製品を提供するための能力を維持することを重視しています。BCMの焦点は、事業継続計画(Business Continuity Plan, BCP)の策定と実行にあります。BCPには、事前対策、緊急時の対応、回復と復旧のプロセスが含まれます。

要点をまとめると、リスクマネジメントはリスクと機会の両面を総合的に評価し、組織の目標や戦略の達成をサポートするためのプロセスです。一方、事業継続マネジメント(BCM)は、事業の継続性を確保するための戦略と手法を策定・実行するプロセスです。BCMは主に予期しない出来事による影響から事業を継続することを目的としています。両者は組織の安定性と持続性を確保するために組み合わせることが推奨されます。

以下に、リスクマネジメントと事業継続マネジメントの違いについて、様々な側面から比較してみます。

  1. 目的と焦点:
    1. リスクマネジメント: リスクマネジメントの目的は、組織が直面する様々なリスクを特定し、評価し、管理することです。リスクマネジメントは予防的なアプローチであり、組織の目標や戦略の達成をサポートすることを重視しています。焦点は、リスクの特定、評価、対策の策定、監視、コミュニケーションなどがあります。
    1. 事業継続マネジメント: 事業継続マネジメントの目的は、組織が災害や混乱、異常事態などの予期しない出来事による影響から事業を継続するための戦略と手法を策定・実行することです。事業継続マネジメントは、組織の持続的な運営を確保し、顧客や利害関係者のニーズに対応するための能力を構築することを目指しています。焦点は、事業継続計画の策定、事前対策の実施、事後対策と回復、ビジネスの継続性確保などがあります。
  2. 対象と範囲:
    1. リスクマネジメント: リスクマネジメントは、組織全体のリスクを対象としています。これには、組織の内部や外部の様々な要因から生じるリスクが含まれます。例えば、戦略的なリスク、オペレーショナルリスク、財務リスク、コンプライアンスリスクなどがあります。リスクマネジメントは、組織全体にわたるリスクを統合的に評価し、適切な対策を講じることを目指します。
    1. 事業継続マネジメント: 事業継続マネジメントは、主に事業の継続性を対象としています。これは、災害や混乱が発生した場合に、組織が継続的にサービスや製品を提供し、業務を遂行するための計画と対策を策定することを意味します。事業継続マネジメントは、主にビジネスプロセス、ITシステム、物理的なインフラストラクチャーなどの事業上の要素に焦点を当てています。
  3. アプローチとプロセス:
    1. リスクマネジメント: リスクマネジメントは、組織がリスクを特定し、評価し、管理するためのプロセスです。これには、リスクの特定、リスクの評価と分析、リスク対策の策定、リスクモニタリングと制御、リスクコミュニケーションなどのステップが含まれます。リスクマネジメントは継続的なプロセスであり、組織が変化するにつれてリスクの特定と評価を更新し、適切な対策を講じる必要があります。
    1. 事業継続マネジメント: 事業継続マネジメントは、主に事業継続計画(Business Continuity Plan, BCP)を策定し、実行することに焦点を当てています。事業継続計画は、事業継続のための対策や手順、リソースの確保、人員配置、通信手段の確保などを含みます。また、事業継続マネジメントは、事前の対策、緊急時の対応、回復と復旧のプロセスを含んでいます。重要な要素として、事業継続計画の策定、緊急対応組織の設置、演習とテスト、監視と評価があります。
  4. 時間的側面:
    1. リスクマネジメント: リスクマネジメントは、予防的なアプローチであり、将来のリスクを特定して管理することを目的としています。組織は、リスクを特定し、リスクが発生する前に適切な対策を講じることで、将来の被害や損失を最小限に抑えることを目指します。
    1. 事業継続マネジメント: 事業継続マネジメントは、事前の計画と準備に加えて、緊急時の対応と回復のプロセスも含まれています。事業継続マネジメントは、予期しない出来事や災害が発生した際に、組織が迅速かつ効果的に対応し、被害を最小限に抑え、事業を早期に回復するための手段を提供します。