レジリエンス

レジリエンス:不確実事象への弾力

不確実事象は、リスクと機会の両方を生み出し、その影響は短期から中長期にわたる可能性があります。また、不確実事象は事業領域を変化させ、新たな市場を生み出す可能性がある一方で、競合他社にもチャンスをもたらすことがあります。このような不確実事象は非常に予測しづらく、まるでゴム毬を弾ませる地面が毎回変わるかのように、不規則な変化をもたらします。 

レジリエンスは一般的に回復力を意味しますが、不確実事象に対しては必ずしも回復が保証されるわけではなく、影響を予測することは難しく、その特性から、レジリエンスは「不確実事象への弾力」として定義します。 企業経営者は、不確実な時代において、事象の不確実性を理解し、その変化に対して柔軟に対応する必要があります。レジリエンスを持つことで、予測しづらい不確実事象による影響にも対応できる可能性が高まります。

レジリエンス (resilience) 
レジリエンresilienceとは、回復力、復元力、弾力を意味する英語表現である。 「resilience」の意味resilienceとは、主に「回復力」「立ち直る力」「復活力」「弾力」などを意味する英語表現。回復力や弾力と訳されるが、近年注目を集めている外来語としてそのまま「レジリエンス」と表記されることも多い。心理学で登場する概念であり、単にストレスに強い、打たれ強さではなく、困難に直面しても不利な状況から再起できる力を表す実用。              
                                    実用日本語表現辞典

不確実事象の統合管理: ピンチとチャンスの両利き経営

不確実な時代、環境変化を正しく認識した上で、リスク回避、機会獲得を判断、対応することが現代企業で求められます。そのためにも、経営資源の入れ替えと再配分により、ビジネスモデルを積極的にトランスフォームしながら進化適応できるかが問われています。

今までのリスクマネジメントと経営戦略は、定量的な管理、また、それぞれに対応領域が分かれていました。現在の不確実事象は、今までの過去からのデータ、経験を無力化する一方、管理領域が相互に混在しています。これは、不確実事象が何に対して、どのような影響を及ぼすかを事前に想定困難が理由に挙げられます。

例えば、パンデミックは、飲食店に打撃を与えましたが、宅配ビジネスへは機会を提供しました。さらに、パンデミックは通常、リスク管理の分野ですが、ビジネスモデル転換は経営戦略(マーケティング、イノベーション)領域です。不動産業界では、リモートによりオフィス需要は低下しましたが、リモート対応のための住宅リフォーム需要は伸びました。つまり、一つの不確実事象に対して、リスクにも機会(戦略領域)にも両方対応できるレジリエンス経営が、ニューノーマルが常態化する時代に必要です。

学習モデル:不確実事象を適切に判断して対応する

不確実事象が、リスク、機会、また両方(乱気流)を発生させる中、以下の学習ループを回しながら事前検知精度、異なる不確実性への適応力を上げていきます。

  • 事前検知:不可能な場合もある
  • 認識する:起こっている不確実事象を正しく認識する
  • 判断する:リスク、機会、乱気流かを見極める
  • 意思決定:とるべき選択肢を決定する
  • 対応する:標準化で対応できるか判断した上で、新たな対応、ビジネスモデルをトランスフォームする
  • レビュー:対応方法の振り返り、事前検知の精緻化

不易実行:価値判断基準と判断、行動評価を首尾一貫する

「変化へ臨機応変に対応する。」と言葉では表現するのは簡単ですが、組織全体で対応するのは難易度が高いのが現実です。変化に対応するためには、価値基準(目的)があり、その基準を組織全体、また、部門、階層で保持していることで、初めて変化への対応が可能となります。

  • 企業理念
  • オペレーション標準化(ルーティン)
  • ブランディング

上記の会社全体の価値基準と共に、オペレーションで実行、結果へ結びつけるために評価基準と連動させます。

  • 全社的な財務価値:シンプルなKGI/KPI
  • 人事評価:価値基準をもとに、判断の正確性と対応への評価

未来洞察:「もっともらしさ」と「ありたい姿」を調整、統合していく

不確実事象は、未来予測の前提を書き換えるインパクトがあります。例えば、地震予知は、同じ震源地で発生しても地殻変動により前提が変わるため、過去のデータを無力化してしまいます。そのため、過去からの延長ではなく、未来から洞察する方法が注目されています。未来洞察は、ありそうな、ありうる未来を社会の大きな要因を抽出して、仮説検証をしていきます。また、モニタリングとして、既存顧客マーケット、顧客など、既存事業領域とのコミュニケーション、さらに、遠心的に枠を広げるイノベーション活動と同期化させることで、変化のシグナルを受け取ります。

以下、未来洞察の大まかな手順です。

  • 未来予測:既存業界が現在から未来への予測
  • マクロ未来観:社会変化仮説
  • ミクロ未来観:自社領域の仮説
  • 未来像:自社のありたい未来
  • 統合:未来観と未来像の統合
  • フィロソフィー:パーパス、標準化
  • 戦略:イノベーションモデル
  • 実行:経営資源の再配分、組織改革
  • 進化適応:イノベーションの推進
  • 再調整:未来像の検証

「過去からの延長」と「あるであろう未来」

未来を洞察して大きな変化要因から逆算してマイルストーンを管理すると同時に、現在の延長が続くことも想定するべきです。つまり、未来予測と未来洞察のどちらかではなく、二項両立が必要です。ただし、慣性の法則が働くので、どうしても過去からの延長であるフォーキャストモデルが組織内部で重用する傾向にあります。

既存事業領域の競合ベンチマークを中心にするフォーキャストと未来の顧客マーケット(社会)から重要イベントを抽出して独占領域のありたい姿からバックキャストとをトレード・オンして管理していくことがレジリエンス経営管理の骨子となります。