グローバリゼーションにより、サプライチェーンは広範囲に拡大し、テクノロジーと外部環境の変化が各プロセスの要素を増加させています。幅広いサプライチェーンと複雑なプロセスは、必然的に管理リスクを高めます。例えば、グローバルな営業拠点からの多様な顧客要望、異なる製造拠点の管理方法、増える調達パートナーによるマルチチャネル物流の要求があり、コスト効率のために海上輸送を行いながら、時間との競争により航空輸送も必要となる場合もあります。さらに、顧客の要望と調達のズレなどへの対応をするため、標準的な作業時間を細分化することが難しく、生産性の管理が現場で難しい状況に直面しているのも実情です。
一方で、自社のグローバル化がリスクをもたらすならば、他社のグローバルチェーンも同様にリスクにさらされている可能性が高いことを意味します。つまり、一般的に、マクロ環境がグローバルに展開しているサプライチェーンには、自社にとっての事業機会が生まれる可能性もあると認識できます。
自社の未来ビジョンを企業フィロソフィーと共に明確にし、リスクと機会を抽出し、経営資源を可視化した上で、適切な戦略を実施する必要があります。
■ このような悩みはありませんか?
- 経営資源の組み替えをしたいが、自社の生産性と付加価値領域の見極めが難しい
- 起こる事象へ対応が後手になってしまう
- リスクに備えたいが販売機会も逃したくない。どのように備え、対応すれば良いか
- 調達ルートを複線化、さらに、コストダウンのためにも新たにサプライヤー開拓したい
- 内製化するべき工程とアウトソーシングする工程を見極め、見直したい
- 地政学リスクなどへ対応するために工場移転、新設、アウトソーシング先を開拓したい
- 海外販売網を構築、再構築したい。海外拠点の自前開設、アライアンス、代理店、M&Aなど、どの選択、再構成するべきか
■ ワールドゲートの考え方
- サプライチェーン・マネジメントの目的
グローバリゼーションとテクノロジーの進展により、地政学的な変動や資源価格の上昇、競争の激化などが引き起こされ、サプライチェーンを取り巻く環境がより複雑になっています。この環境の複雑性に比例して、サプライチェーンの各要素における不確実性も増加しています。
しかしながら、企業が社会の公器であることを大前提とした上で、競合環境を回避するだけでなく、どれだけ独自の領域を確保できるかが重要です。これによってニッチ市場の創造や獲得、更にはイノベーションを促進し、サプライチェーンのマネジメントにおいても求められるべきです。サプライチェーンを単に「仕入れから自社製品を顧客に届けるまでの一連の流れ」と狭義に捉えるのではなく、現在と未来の顧客価値を捉え、断続的な利益を確保できる持続的なサプライチェーンのトランスフォーメーションが必要とされています。
■ 支援活動に必要なポイント
サプライチェーンを支援活動と主活動と分けた場合、主に支援活動のサプライチェーン設計/管理が主活動領域の成功を9割占めると言われています。その上で、主活動の前提である支援領域において、適切なサプライチェーン管理が必要になります。以下、支援活動領域に必要な一例です。
- 自社経営資源と外部環境との調整、統合
- 現状領域と未来領域の統合
- 未来像制定した上でのリスクと機会
- コア・コンピタンスから派生するニッチ領域の開発と外的環境がもたらすニッチ領域への対応
- 競合領域からの脱却、競合の模倣困難性の確立
- (予期せぬ)環境変化への即応体制
- 生産性領域と付加価値創出領域の棲み分けと利益創出
- 人材開発(人的資本による付加価値創出)
■ 主活動に必要なポイント
主活動は業務効率、生産性領域にフォーカスされる傾向がありますが、リスク対応を踏まえた上で、現在と未来における環境変化から派生する顧客価値変動を捉えて、「競争優位の源泉となる付加価値創出へ経営資源を集中するために、生産性を上げる。」ことが肝要です。
- 顧客価値創出
- 設計管理の見地から調達活動の複線化、QCD管理
- 生産工程の標準化、BPRによるDX
- 物流のマルチチャネル、トレース
- 顧客ペインポイント診断、抽出、フィードバック
■ リスクと機会
あらゆる環境変化が、今までのハザードリスクへの対応以外にもグローバリゼーションも相まって企業に回復不能なダメージを与えます。一方、自社への事業環境内リスクは競合他社へのリスクになることが多く、同時に、備えや対応が素早ければ、自社の機会、ニッチスペースがもたらされることにもなります。つまり、一つの事象がリスクにも機会にもなるのであれば、両方に対応できる備えがサプライチェーンに求められています。調達や製造の複線化だけではなく、リスクと機会で複眼的、多面的に捉えた上で、対策を講じる、さらに、予期せぬリスクに遭遇した場合はピンチの最小化、一方で、機会に遭遇した場合はチャンスの最大化できる体制を整えておくべきです。
- グローバル・サプライチェーン上のリスクと機会(抜粋)
以下は、主なサプライチェーン上のリスクと機会になる事象です。
項目 | 説明 |
支援活動 | 災害や緊急事態への対応や社会貢献活動など、企業が行う支援や援助活動。 |
経営陣 | 企業のトップマネジメントや経営者層。経営方針の決定や戦略策定、企業のビジョン実現の責任を持つ。 |
経営資源再配分 | 企業内の資源(資金、人材、設備など)を適切に再配分し、最適な活用を図ること。 |
コンプライアンス | 法令や規制への遵守、倫理的な行動、企業のルールやガバナンスの確立など、法律や規制に従って事業を行うための取り組み。 |
競合会社 | 同業他社との競争関係。競合他社の行動や戦略を把握し、自社の競争力を維持・強化するための情報収集や戦略策定が求められる。 |
新規参入者 | 既存市場に新しく参入する企業や競合他社。市場シェアの変動や競争激化の要因となる。 |
知的財産、専有情報の保全 | 企業が保有する特許、商標、著作権などの知的財産や企業の内部情報を外部からの不正利用や漏洩から保護するための対策と管理。 |
認証、規定変更、対応 | 企業が取得している認証や規制に適合するための取り組みや、規制の変更に対する対応。法令や規制に準拠することで事業の継続性と信頼性を確保する。 |
主活動 | 企業の中核となる業務や主要な事業活動。企業のコアコンピタンスや競争力の源泉となる。 |
調達 | 原材料や部品、製品などを外部から調達する活動。調達の効率化と供給リスクの管理が重要であり、適切なサプライヤ選定や供給体制の構築が求められる。 |
地政学紛争/枠組み変更 | 地域間の政治的紛争や国際的な枠組みの変化により、ビジネス環境や貿易ルートに影響が生じるリスク。 |
為替変動 | 通貨間の相対的な価値変動により、輸出入や海外取引における為替リスクが生じる。為替の変動により、収益や原材料コストなどに影響が及ぶ可能性がある。 |
原価高騰 | 原材料やエネルギー価格の上昇、労働力費用の増加などにより、製品の原価が上昇するリスク。原価高騰に対処するためのコスト管理や効率化が求められる。 |
不良部品、品質低下 | サプライヤの品質不良や製造プロセスの問題により、製品の品質が低下するリスク。品質管理と品質保証の強化が必要となる。 |
調達先リスク | サプライヤの経営状況、納期遅延、品質問題、倒産などにより、調達の安定性や供給の中断が生じるリスク。サプライヤ管理とリスクモニタリングが重要となる。 |
孫請け会社リスク | 下位のサプライヤや業務委託先の問題(品質低下、納期遅延、倒産など)により、サプライチェーン全体にリスクが波及する可能性がある。サプライヤの管理とリスク評価が必要となる。 |
製造 | 製品の生産や製造プロセスに関連する活動。生産効率や品質管理、生産設備の維持・改善などが重要となる。 |
人材不足 | 適切なスキルや経験を持つ労働力の不足により、企業の業務遂行や成長に影響を及ぼすリスク。人材確保と開発、人材戦略の策定が必要となる。 |
人件費高騰 | 労働力の需要と供給のバランスの変化により、人件費が上昇するリスク。人件費管理と労働力の効率的な配置が求められる。 |
業務委託先リスク | 業務を委託しているパートナーやサードパーティの問題(品質低下、遅延、情報漏洩など)により、業務の継続性や信頼性に影響が及ぶリスク。業務委託先の管理と評価が必要となる。 |
業務委託先の価格高騰 | 業務を委託しているパートナーやサードパーティの価格の上昇により、業務のコストが増加するリスク。コスト管理と契約条件の見直しが求められる。 |
スキル教育 | 変化する技術や業務に対応するために、従業員のスキル開発や教育プログラムの提供が必要となる。組織の能力開発と継続的な学習の促進が求められる。 |
業務フロー複雑化 | 事業の成長や多様化に伴い、業務プロセスやフローが複雑化するリスク。業務の最適化と効率化が求められる。 |
生産効率低下 | 生産プロセスの遅延、不良品の増加、作業効率の低下などにより、生産効率が低下するリスク。生産プロセスの改善と効率化が必要となる。 |
ハザード | 自然災害(地震、洪水、台風など)や事故(火災、爆発、漏洩など)などの突発的な危機的状況や災害リスク。災害対策と予防策の策定が重要となる。 |
物流 | 商品や資材の輸送や配送、在庫管理などの物流活動。効率的な物流ネットワークの構築と管理が重要となる。 |
遅配 | 商品の供給や配送が予定よりも遅れるリスク。供給チェーンの可視化と調整、ロジスティクスの最適化が求められる。 |
事故 | 輸送や物流活動における事故やトラブル(交通事故、倉庫火災など)により、物流プロセスに遅延や中断が生じるリスク。安全対策と事故対応能力の強化が必要となる。 |
ハザード、ストライキ | 自然災害や労働争議、ストライキなどにより、物流活動や供給チェーンに中断や制約が生じるリスク。リスク評価と事前対策の策定が求められる。 |
ロジスティクス | 輸送や配送、在庫管理などの物流プロセスと活動。供給チェーン全体の効率化と調整が求められる。 |
倉庫 | 商品や資材の保管や管理、在庫管理などを行う施設や活動。適切な倉庫設備と在庫管理が重要となる。 |
為替 | 通貨間の相対的な価値変動により、国際取引や海外事業における為替リスクが生じる。為替リスクのヘッジや外国為替リスク管理が必要となる。 |
販売 | 商品やサービスの販売活動。マーケティング戦略や販売チャネルの選定、顧客関係の構築が重要となる。 |
契約変更 | 取引先や顧客との契約条件や取引条件の変更により、ビジネスの運営や収益に影響を及ぼすリスク。契約管理と変更管理の適切な対応が求められる。 |
製品/サービス不良 | 製品やサービスの品質や性能に問題が生じるリスク。品質管理と品質保証体制の強化が必要となる。 |
故障対応 | 製品やサービスの故障やトラブルに対する適切な対応が求められるリスク。顧客サポート体制と迅速な対応能力の確保が重要となる。 |
■ WGの取り組み(アプローチイメージ)
項目 | 説明 |
現状把握 | 企業理念、経営資源、事業戦略、ドメイン、競合環境など、現在の状況を把握し分析します。 |
事業領域分析 | サプライチェーンの事業領域を詳細に分析し、強みや弱みを明確にします。 |
事業定量分析/BSC | 事業の成果を定量的に評価するための指標を設定し、バランススコアカードを活用します。 |
未来観 | 外部環境の変化や市場のトレンドを把握し、将来的なビジネス展望を考慮します。 |
未来像 | サプライチェーンの将来的な姿や目標を明確に定義し、それに向けた方向性や戦略を策定します。 |
ビジネスレジリエンス戦略 | サプライチェーンのレジリエンスを確保するための戦略や計画を策定します。 |
経営資源管理 | 経営資源の効果的な管理と活用を行い、持続的な競争優位を確保します。 |
外部資源獲得/アライアンス | 外部からの資源獲得や提携関係の構築を通じてサプライチェーンの強化を図ります。 |
ステークホルダーの関与とコミュニケーション | サプライチェーンに関与する関係者とのコミュニケーションを確立し、共通理解と協力を促進します。 |
管理指標/KGI/KPI(時間軸別) | 時間軸に基づいた管理指標やキーパフォーマンスインディケータを設定し、経営の評価と改善を行います。 |
生産性/テクノロジー管理 | 生産性向上やテクノロジーの活用による効率化や競争力強化を管理・推進します。 |
調達活動 | 適切な資材やサービスを調達するための活動を計画し、供給基盤の確保を行います。 |
製造工程 | 製品の製造プロセスを管理し、品質と効率の向上を図ります。 |
物流工程 | 製品や材料の物流プロセスを効率化し、スムーズな流通を確保します。 |
マーケティング/イノベーション管理 | マーケティング戦略やイノベーションの管理を通じて市場シェアの拡大や新たなビジネス機会を創出します。 |
営業 | 製品やサービスの販売活動を計画し、顧客獲得や収益増加に向けた営業戦略を策定します。 |
保守・メンテナンスサービス | 製品の保守やメンテナンス活動を計画し、顧客満足度と製品の信頼性を確保します。 |